子どものための劇:まっくろけ物語(一幕)・・・一部公開

北野邦生 作 まっくろけ物語  一幕

 

登場人物
  おゆき(まっくろけ)
  おつる
  老 人
庄 屋
  村人たち
  子どもたち

 

時は昔。
緑の草が一面に生えている村はずれの丘の上。
上手に崖、下手手前に小さな池がある。
小鳥の声が、賑やかに聞こえてくる。
「おゆき」という女の子が、草の上に腰を下ろし、しきりに小鳥の鳴き声を真似ている。
次第に小鳥との調子が合わなくなり、終いには立ち上がって、小鳥の声を追って走り回る。
小鳥の声が、遠退いていってしまう。
おゆきは、恨めしげに、小鳥の去った方角を眺めて立ち尽くす。
おゆきは、足下の小石を拾って、空に放る。
しーんとした時が流れる。

 

おゆき:ちぇっ。

 

おゆきは、ごろりと横になる。
一羽の小鳥の鳴き声が、おゆきの上を通る。
おゆきは、救われた顔で飛び起きるが、小鳥の声は遠ざかる。

 

おゆき:ふうん。

 

おゆきは、力無く再び横になる。
しーんとした間が続く。
空を見上げたまま、泣いているおゆきの微かな声がする。
やがて、遠くから歌うような子どもたちの声が聞こえてくる。

 

 まっくろけ まっくろけ
 まっくろけのおゆき まっくけのおゆき
 まっくろけ まっくろけ