北野邦生戯曲集「脱走」他12篇 -3-(イソップのおしばい:一幕四場)・・・一部公開

     イソップのおしばい  一幕四場

 

 

でてくるもの
 イソップおじさん
キツネ1、2、3、4
 いど
 カエル1、2、3
 ライオン
 めうし1、2、3
 しろいカラス
 ハト1、2、3、4
 カラス1、2、3

 

イソップ:やあ、こんにちは。だれでもしってるイソップおじさんだよ。きょうは、わたしのはなしを四つのおしばいにして、ごらんにいれよう。

 

キツネ1:こまった、こまった。わなにかかって、だいじなだいじなしっぽを、きられてしまった。みんなにみられたらはずかしいなあ。どうしよう。そうだ、いいかんがえがある。おーい、みんなあ、いいことおしえてあげるから、あつまってー。
キツネたち:いいことって、なあに。
キツネ1:あのね。みんなのしっぽ、みてごらん。かっこわるくない?それに、しっぽなんておもくてじゃまだろ? おもいきって、きりとっちゃいなよ。
キツネたち:しっぽ、きりとっちゃうの?
キツネ1:そうだよ。そのほうがかっこいいさ。ほら、ぼくかっこいいだろ?ほら、こんなにとべるんだぞ。
キツネ2:わかった、わかったぞ!
キツネ3:なにが、わかったの?
キツネ2:わなにかかって、しっぽがきれちゃったんだ。
キツネ1:ち、ちがうよ。じぶんできったんだよ、わざときったんだぞ。
キツネ4:そうか、じぶんだけしっぽがないと、はずかしいから、ぼくたちのしっぽもきらせちゃうつもりだったんだ。
キツネ1:ち、ちがうよ。じぶんできったんだよ。